2009-01-01から1年間の記事一覧

成功者の孤独と切なさ

人気作家・村上春樹は、1000万部を突破した『ノルウェイの森』の大ヒットを前に、「切なさ」と「孤独」を感じたと語っている。 「こういうことを言うのが僭越で傲慢であることはわかっているのだがそれでも−僕はどうしてもある種の切なさから逃れること…

現代人を覆う「不安」

「私はその人を先生と呼んでいた」で始まる、夏目漱石の代表作『こころ』に、こんな一節がある。 「先生は、『不安を駆逐するために書物に溺れようと努め』『猛烈な勢いをもって勉強し始めた。』しかしどのように勉強したところで不安から逃れられないと悟っ…

「考えない」ことが求められる現代

山田玲司『非属の才能』は、今日の人は「考えない」ことが求められていると主張する。なぜ勉強するのか、なぜ生きるのか、そんなことは考えず、学生時代はとにかく勉強して、よい会社に就職すればよいのだと教えられているのが現状だ。しかし、何のために生…

なぜ、むなしいのか

世界的な不況で、不安が人々を覆っている。だが、経済的な不況が、不安の根本原因なのだろうか。 文化人類学者・上田紀行は、『生きる意味』で次のように書いている。 「私たちがいま直面しているのは“生きる意味の不況”である。 一部屋に一台テレビがあるよ…

科学が解きえぬ謎

ダン・ブラウン著『ダ・ヴィンチ・コード』は世界中でベストセラーになった。そのシリーズの『悪魔と天使』も翻訳されているが、テーマは科学と宗教の対立だ。そこに登場する欧州原子核研究機構の所長のセリフに、こんなものがある。「欧州原子核研究機構の…

本当になすべきことを探求

生まれてから死ぬまで、人間を動かすものは何か。ルソーは、こう指摘する。「十歳にしては菓子に動かされ、 二十歳にしては恋人に、 三十歳にして快楽に、 四十歳にしては野心に、 五十歳にして貪欲に動かされる」 イソップ物語には、こんな話もある。「蔵の…

後生暗い心

池田晶子著『暮らしの哲学』の「“死”は怖いものか?」という章には、死が恐ろしいのは、死んだらどうなるか分からないからだと論じられている。 “死ねばなくなる”と人が本当には思っていないことの何よりの証拠は、死への恐怖を所有しているというまさにその…

6%の医師が自殺を考える

9月2日、日本医師会が実施したアンケートによると、6%の医師が死や自殺について考えていた。日本医師会は今年2月、会員の勤務医1万人に調査を行い、3879人から回答を得たという。 「自殺や死について1週間に数回考えることがある」との回答は5・…

生きづらさを語る麻薬事件

8月5日、俳優の押尾学(31)が、合成麻薬MDMAを使用した容疑で逮捕された。押尾容疑者は、2日の夜、港区の六本木ヒルズのマンションで、銀座のクラブで働いていたホステス(30)と錠剤を飲んだという。だが女性に異変が生じ、恐くなった押尾容疑…

後を絶たないストーカー殺人

8月3日に東京都港区の民家で、鈴木芳江さん(78)が刺殺され、同居していた孫の江尻美保さん(21)も重体となった。会社員、林貢二容疑者(41)が、現行犯逮捕されている。江尻さんに好意をよせた林容疑者は、江尻さんが勤めていた耳かき店に通いつ…

イライラする若者

イライラを感じている人が20代、30代の人で増加し、60%を超えたことが、大学共同利用機関「統計数理研究所」の調査で分かった。 ここ数年、50代以上の世代のイライラ感は、ほぼ横ばい状態のため、若者がかかえるストレスの大きさが、改めて浮き彫り…

『1Q84』のテーマは

村上春樹の新刊『1Q84』は、発売から12日で100万部突破、すでに200万部を超えている。 大変な反響ですが、内容はオウム真理教の事件がモチーフだ。 インタビューで村上春樹氏は、 「オウム裁判の傍聴に10年以上通い、死刑囚になった元信者の心…

信ずるものの真贋

全国で食品偽装が発覚するきっかけになったのが、2007年6月に摘発された、北海道のミートホープ社の「牛肉ミンチ品質偽装事件」だった。牛肉に、豚や鶏、羊、カモなどの肉を混ぜる大胆かつ悪質な手法で偽装ひき肉を製造していたが、偽装を主導した社長は「半…

原因を正しく知るのが急務

十九世紀半ば頃までは、病気は「悪い空気」や「悪い水」が体内に入ったせいだと考えられていた。これを「ミアズマ説」と言う。 病気の原因を正確に知らねば、病気を治すことはできない。 日露戦争では、三万人の兵士が脚気で死亡した。脚気はビタミンB1が…

コロコロ変わる人の評価

3月末にワールドベースボールクラシック(WBC)で、日本が優勝した。中国のインターネットメディア新浪体育は、決勝戦では最後イチローの力で韓国を破ったと伝え、この優勝が経済に及ぼす影響を報じたという。日本の野球界では巨人が優勝すると、商店の…

好きなことでも仕事にすると

「好きなことを仕事にできたら幸せ」と考える人は多いだろう。 だが『計算力を強くする』などの著書がある鍵本聡氏は、「数学が好き」と素直には言えないと言っている。 「じつは僕自身が、数学をそれほど好きじゃないかもしれないんですよ。誰かに「数学が…

未来が暗いと現在が暗くなる

今、不況で大変、大変と言われている。去年の今頃は、どの会社も「うちへ来て下さい」と言っていたのに、今は自宅待機。内定をもらっても、少しも安心できない。なぜ不況が大変かといえば、二年後、三年後どうなるか分からないからだろう。先が読めれば、今…

三日見ぬ間の桜かな

「世の中は 三日見ぬ間の 桜かな」という諺がある。 桜が満開と喜んでいても、三日見ぬ間に散ってしまうように、この世のすべては有ると思ったのも束の間、夢のように消えてしまう。 恋人がいる、婚約者がいるといっても、いつ何がおこるか分からない。 4月…

身勝手な人間

1月15日、ニューヨークで155人を乗せた飛行機が、鳥(ガン)の群れと衝突して、エンジンが両方とも故障。しかし絶望的な状況の中、機長のとっさの適確な判断によってハドソン川に不時着し、全員の命が助かり、「ハドソン川の奇跡」として絶讃された。 …

怒りは敵

映画『ターミネーター4』の撮影中、主演のクリスチャン・ベールが激怒し、カメラマンや監督に怒鳴り散らした映像が、インターネットで暴露されている。 ベールの暴言を音楽に乗せた動画は、150万人が視聴。あまりの騒ぎに本人も「チンピラみたいな行いを…

ただ念仏のみぞまこと

昨年末におきた、投資アドバイザー、バーナード・マドフ氏による「ねずみ講詐欺」は、被害総額500億ドルという、史上最大級の詐欺だ。 いつの時代も、ねずみ講でだまされるのは世間知らずの一般人だが、今回は、いつもなら油断無く分析するはずの、基金運…

本当の動物愛護とは

「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」といえば、世界最大規模の動物の権利擁護団体として知られる。PETAは毎年、毛皮製品を身につけている有名人を投票で選び、ワーストドレッサー(最悪のファッション)を発表している。 今年も投票が始まった…

病原菌より怖ろしいのは

結核は過去の病気ではない。現在も数百万の人が感染し、6人に1人が死亡している。 数年前にXDR(超薬剤耐性結核)とよばれる新しい結核菌が現れたが、鳥インフルエンザ騒ぎのため、注目されなかった。 通常の結核ならば、95パーセント治癒するが、X…

海賊は善人か悪人か

アフリカのソマリア沖では、海賊の活動が活発化し、昨年は約100件の乗っ取りが発生した。昨年の十一月には、一億ドルの石油を運搬中の巨大タンカーが乗っ取られている。 海賊は膨大な身代金を要求するが、ソマリアでは英雄視する人も少なくない。金遣いの…