2010-01-01から1年間の記事一覧

不況のトンネルを越えたら何が

1975年、75歳で世を去った“海運王”アリストテレス・オナシスの遺産は1兆円と言われる。 睡眠3時間で猛烈に働き、20代後半には億万長者に。“金は道徳よりも強い”と豪語し、手段を選ばず事業を広げ、財産は小国以上だった。 そのオナシスが晩年にこ…

必ず死ぬのに、なぜ生きる

哲学者・中島義道(電気通信大学教授)は『どうせ死んでしまう……私は哲学病。』の中で、いやいやながらも仕事を続けている人が気付いている事実を、こう述べている。 仕事を厭々ながら続けている人は多いと思う。そういう人は一つだけ確実に真実を見ている。…

『なぜ生きる』を考える時代

先回に続き、『IT革命のカラクリ―東大で月尾教授に聞く!』から引用したい。 田原「僕はよくいうんですが、いままでの教育っていうのは親も教師も楽だったと思う。『勉強しろ。勉強しないとよい学校に入れない。よい学校に入れないとよい会社に就職できない。…

幸福論の破綻

ジャーナリスト田原総一朗氏と、月尾嘉男東大教授の対談『IT革命のカラクリ―東大で月尾教授に聞く!』に、こんな話がある。 田原「僕はバブルの時代、どんな講演をやっても最後にかならず同じ質問が出るので辟易したけどね。政治の話をしても環境の話をしても…

有無同然

米国プリンストン大学の教授たちが、年収と幸福の関係を、アメリカの45万人以上を対象に調査した。収入が上がるほど生活の満足感は上昇するものの、幸せな気分は年収630万円前後で、頭打ちになってしまうという結果が出たという。 金や財のないのが苦悩…

ある日、突然崩れる幸せ

10月4日深夜、神戸市北区の路上で、高校2年の男子生徒(16)が、男に刃物のようなもので頭や首を刺され、殺害された。交際中の中学3年の女子生徒(15)と、立ち話をしていた時の、一瞬の出来事だった。 犠牲となった男子生徒はブログに、オートバイ…

なぜ人命は地球より重い?

埼玉県春日部市のアパートで、9月1日、小学校五年生(11歳)の少年が遺体で発見された。29歳の母親が、「睡眠薬を飲ませた」と、殺害を供述している。バスケット選手を夢見ていた少年の将来は、母によって断ち切られた。周囲からは“仲良し親子”とみら…

根深い人間性

周恩来は最後、ガンによる苦痛との闘いを強いられた。病床で「マルクスからの招待状を、私はもう受け取りました」と語ったと伝えられる。毛沢東も日本共産党中央委員会との最後の会談で、「孔子は七十三歳で死んだ。私はいま七十二歳だが、今年七十三歳にな…

一寸先は闇

交通事故で亡くなる人の、二倍以上の人が、自宅で命を落としている。 ◆交通事故の2倍以上が自宅で死亡2008(平成20)年1年間に交通事故で死亡した人は7499人。1995(平成7)年の時点では、1万5147人だったので、 関係者の努力とみんなの注意によってかなり減…

自己評価の低い高校生

現在、日本には高校生が、337万人いる。研究機関の調査によると、3人に2人が「自分はダメな人間だ」と感じているという。自己評価が低い根本原因は、何だろうか。そして、その解決は?高森顕徹監修『なぜ生きる』1部2章には、こう書かれている。 自分…

なぜ自殺してはいけないのか

平成十一年、日本最高の知性ともいわれた江藤淳氏が、六十六年の生涯にみずから終止符を打った。 遺書には、こう書かれていた。 心身の不自由は進み、病苦は耐え難し、去る6月10日、脳梗塞の発作に遇いし以来の江藤淳は形骸に過ぎず。自ずから処決して形…

悠々たるかな天壤

明治36年、旧制一高の秀才、藤村操が16歳の若さで、華厳の滝に身を投げた。「厳頭之感」と題された遺書は有名である。 「悠々たる哉天襄、遼々たる哉古今 五尺の小躯を以て比大をはからむとす ホレーショの哲学ついに何等のオーソリチーを価すものぞ 万有の…

秋葉原のようにしてやろうと思った

6月22日、広島県のマツダ工場で、42才の元機関社員が乗用車を暴走させ、1人が死亡、10人が重軽傷を負った。 事前に包丁も買って、車に隠し持っていた容疑者は、調べに対し、「工場に車で突っ込んだ後、車から降りて包丁を振り回し、秋葉原の事件のよ…

経済の行き詰まりは思想の行き詰まり

日本ではバブルの反省から一時、『清貧の思想』 という本が話題になった。幸せになるには欲望を抑えねばならない、と考える人も少なくはないからだろう。 百年に一度の大不況で、ヨーロッパ各国にも「清貧の思想」が復活している。 ドイツでは、国民に倹約を…

不況だから自殺が増えるのか

警察庁は5月13日、昨年1年間の全国の自殺者3万2845人の調査結果を公表した。 20歳代、30歳代は前年に続き過去最悪を更新したという。動機別では「失業」や「生活苦」が大幅に増加し、50歳代以降の「孤独感」も目立つ。 自殺者は12年連続で…

有無同然

ティム・スペクター著『99%は遺伝子でわかる!──人生はどこまでプログラム済みか』では、物が豊かになっても、幸福感は増えていない現状を、このように訴えている。 人間はもっとたくさんのものが手に入れば、自分は幸福になれるものと思いこんでいる。 …

行方不明になる私

自分のことは自分が一番知っている、と思いがちだが、「汝自身を知れ」と古代ギリシアからいわれてきたように、もっともわからないのが自分自身である。 そもそも、「私」を見たことのある人はいない。 毎朝、鏡で見ているのは「私の顔」であって、「私」そ…

眺めている死と、目前に迫った死

女流哲学者・池田晶子氏は、平成十九年二月、腎臓ガンのため46歳の若さで急逝した。 遺稿となったコラムの最後に、自分を「一生涯存在の謎を追い求め、表現しようともがいた物書き」と記していた通り、生の意味、死の意味を問い続けた哲学者だった。「生きて…

本当の幸せを求めて

敗戦後の日本が経済復興を遂げていった時代は、物が豊かになることが「幸せ」だったのだろう。 だが、物が揃った今、現代の若者は、幸せを見失ったと田原総一朗は言う。 かつての日本は、年齢とともに収入が増え、どんどんモノを手に入れた。私自身もそうだ…

涙もいろいろ

バンクーバーオリンピックの女子フィギュアは、キム・ヨナ選手と、浅田真央選手との、熾烈な一騎打ちとなった。 表彰台に立って流す涙は同じでも、金メダルの「嬉し涙」と、あと一歩で届かなかった銀メダルの「悔し涙」とでは、「心」は正反対だ。 涙にも、…

「生活の基盤」が大事と言うが

「なぜ生きる」より、「生活の基盤」を調えて、明日、食べられるようにするのが先だと言う人がほとんどだ。 だが、衣食住の確保をしても、それらは最後すべて、置いてゆかねばならない。『徒然草』百六十六段には、このように書かれている。 人間の、営み合…

知識が増えても解明しない問題

著名な脳科学者・茂木健一郎が、エッセイ『生きて死ぬ私』の中で、生死の問題に取り組んでいる。 科学の発達によって知識は格段に増えたものの、人生の目的は何かという究極の問いは、依然として答えが出ていないと訴えている。 「科学の発達により、宇宙と…

どこに向かって頑張るのか

ラジオ体操などを聞いていると、よく「今日も一日頑張りましょう!」と言っている。 しかし、どこに向かって頑張るのか?「頑張ることは良いこと」「向上するのは良いこと」「努力するのは良いこと」これが、世の中の大前提になっているようだ。 空と水しか…

真剣な解答が迫られる時

年明け早々、火災のニュースが続いている。1月8日未明、群馬県桐生市の民家で火がおこり、3人の命が奪われた。祖父母と、遊びに来ていた6歳の孫だったという。 「何でこんなことに」と、近所の人も親戚の人も、悲嘆に暮れている姿が報道されていた。「こ…