不況だから自殺が増えるのか

 警察庁は5月13日、昨年1年間の全国の自殺者3万2845人の調査結果を公表した。

 20歳代、30歳代は前年に続き過去最悪を更新したという。動機別では「失業」や「生活苦」が大幅に増加し、50歳代以降の「孤独感」も目立つ。

 自殺者は12年連続で、年間3万人超となった。

 今年は、今のところ昨年よりは自殺は減少しているが、警察庁幹部は「景気が落ち込めば増加に転じる恐れもある」と、厳しい見方を崩していない。
 だが、自殺が増える理由は不況だろうか? もっと根本の問題があるのではないか。

高森顕徹監修『なぜ生きる』1部2章には、こう書かれている。

 日本の自殺者は、年間三万人を超えました。交通事故で亡くなる人の、三倍強です。平成十年の急増は、男性の平均寿命を下げるほどの、異常事態となりました。長引く平成不況が原因と、早計にはいえないでしょう。フランスの社会学者デュルケムは、富豪ほど自殺率が高いことなどから、経済的に豊かな人ほど深刻な苦悩にさいなまれていることを、各種の統計で裏付けています。
 米国の著名な心理学者チクセントミハイは、「生きる目的」がわからないから、どれだけ利便と娯楽に囲まれても、心からの充実が得られないのだと説明しました。自殺の根本原因も、「人生の目的の重さ」「生命の尊厳さ」を、知らないからではないでしょうか。「そんなにまでして、なぜ生きるのか」人生の根底に無知であれば、ひとは死を選んでも決しておかしくないでしょう。