仕事が人生の目的か

 シンクタンクの予想では、日本では20年以内に、労働人口の半分の仕事が、機械に置き換えられるそうです。
 人工知能やロボットに、仕事を奪われる心配は、世界的に高まっています。
 もし、働かなくても食べていける世界になったら、「生きるために働く」という習慣を、根本から変えなければならないので、人類は途方に暮れるだろうと予想する経済学者もいます。
 しかし私たちは、仕事をするために生まれてきたのではありません。ロボットが、人間の仕事を代わりにするようになっても、人間の生きる目的まで、なくなるのではありません。

高森顕徹監修『なぜ生きる』1部5章には、こう書かれています。

「仕事は、人生の目的を達成する手段」と気づく人が、若者を中心に増えていると、社員研修十五年の佐藤英郎氏は言います。しかし実際は、「生きるための苦闘」は激しさを増すばかり。どう生きるかに追われ、「そんなにまでして生きるのはなぜか」を考える時間は、奪われているようです。

アインシュタインのメッセージ

 MITなどの研究チームが、人類初の「重力場」の観測に成功した。二つのブラックホールが衝突して生じた波が、13億年かけて伝わってきた、その微細な波をキャッチしたという。
 驚くべきは、すでに百年前から、アインシュタインがその存在を予言していたことであろう。
 そのアインシュタインのメッセージが、高森顕徹監修『なぜ生きる』2部1章には、こう書かれている。


 科学を何に使うか、その目的を教えるのが宗教の役目だ、とアインシュタインは訴えた。『私の世界観』という本には、「人生の意義に答えるのが宗教だ」とも書いている。二十一世紀が「宗教の時代」といわれるのは、もっとも大事な人生の目的を、はっきり指し示す「真の宗教」が、希求されているからであろう。

老人ホーム転落死事件

 川崎市の老人ホームで、3人の高齢者が転落死した。職員だった23歳の男が逮捕され、3人の殺害を認める供述をしている。そんな殺され方はしなくても、邪魔者扱いされ、何のための人生かと嘆いている人は、少なくないだろう。人間に生まれたのは、人間に生まれなければ果たすことのできない、大事な目的があるからである。もし、人生の目的がなければ、苦しむだけの一生に終わると、高森顕徹監修『なぜ生きる』2部10章には、こう書かれている。

 もし、人生に目的(弥陀の救い)がないとするならば、人は苦しむために生まれ、生きていることになるだろう。
 長寿社会は進んでいるが、老いたらおいしいものを食べようと一生懸命働いてきたのに、糖尿病で食べられない。素敵な洋服で旅行しようと買い込んでいたのに、半身不随で動けない。たまたま入院すればやって来る子供たちは、貯金通帳や印鑑のありかばかりを詮索し金ばかりをねらっている、こんな人生なんなのか、と涙を流して死んでいる。

 人生の目的を知り、達成することほど、大切な事はなかろう。

たとえ宇宙に飛び出しても

人類が火星に住む日

 リドリー・スコット監督、マッド・デイモン主演の『オデッセイ』が公開されました。火星に一人、取り残された宇宙飛行士が、救助が来るまで、資源も空気もない火星で生き抜く姿を描いた、サバイバル映画です。
 これは、もはやSF映画だけの話ではありません。バラク・オバマ大統領は、「2030年半ばまでに、火星への有人着陸を目指す」と宣言しています。超富裕層が、住みにくい地球を脱して、火星で快適に暮らす時代が来るかも知れません。
 しかし、たとえ人類が宇宙に飛び出しても、地上では相変わらず、親が子を殺し、子が親を殺す家庭悲劇が繰り返され、苦しみの絶えることはないでしょう。

高森顕徹監修『なぜ生きる』2部3章には、こう書かれています。


   田なければ、また憂いて、田あらんことを欲し、宅なければ、また憂いて、宅あらんことを欲す。田あれば田を憂え、宅あれば宅を憂う。牛馬・六畜・奴婢・銭財・衣食・什物、また共にこれを憂う。有無同じく然り
(『大無量寿経』)

「田畑や家が無ければ、それらを求めて苦しみ、有れば、管理や維持のためにまた苦しむ。その他のものにしても、みな同じである」
 金、財産、名誉、地位、家族、これらが無ければないことを苦しみ、有ればあることで苦しむ。有る者は?金の鎖?、無い者は?鉄の鎖?につながれているといってもよかろう。材質が金であろうと鉄であろうと、苦しんでいることに変わりはない。
 これを釈尊は「有無同然」と説かれる。
 どれほどの財宝や権力を手にしても、たとえ宇宙に飛び出しても、本当の苦悩の根元を知り、取り除かないかぎり、人生の重荷はおろせないであろう。

やがて死ぬのに、なぜ生きる

 老化防止の薬としては、世界初の臨床試験に、アメリカ食品医薬品局がゴーサインを出しました。この薬で、120歳まで生きられるという専門家もいます。
 その薬は、糖尿病を治す「メトホルミン」という、一般的な薬です。メトホルミンには、糖尿病の治療以外にも、細胞を活性化させ、老化を遅らせる作用があり、動物では効果が確認されています。これから3000人の被験者を募って、臨床試験が行われるそうです。
 しかし120歳まで生きたとして、延びた命で何をすればよいのでしょうか。やがて必ず死ぬのに、なぜ生きる。これは、人類の大きな忘れ物ではないでしょうか。

高森顕徹監修『なぜ生きる』1部1章には、こう書かれています。

 医療の現場では、命を延ばそうと懸命な努力がつづけられています。日本初の脳死移植は三大学から医師が集まり、氷詰めにした臓器をヘリコプターや飛行機で空輸。とくに心臓は、四時間以内に体内に戻さなければならないので、一分一秒を争う戦いです。脳死判定から術後の管理まで、費用はしめて一千万円を超えるといわれます。
 やがて必ず消えゆく命、そうまで延ばして、何をするのでしょうか? 心臓移植を受けた男性が、何をしたいかと記者に聞かれて、「ビールを飲んで、ナイターを観たい」と答えています。多くの人の善意で渡米し、移植手術に成功した人が、仕事もせずギャンブルに明け暮れ、周囲を落胆させました。「寄付金を出したのはバカみたい!」支援者が憤慨したのもわかります。
 命が延びたことは良いことなのに、なぜか釈然としないのは、延びた命の目的が、曖昧模糊になっているからではないでしょうか。臓器提供者の意思の確認や、プライバシーの保護、脳死の判定基準など、二次的問題ばかりが取り上げられて、それらの根底にある「臓器移植してまでなぜ生きるのか」という確認が、少しもなされてはいないようです。
 つらい思いをして病魔と闘う目的は、ただ生きることではなく、幸福になることでしょう。
「もしあの医療で命長らえることがなかったら、この幸せにはなれなかった」と、生命の歓喜を得てこそ、真に医学が生かされるのではないでしょうか。

ドーピングはなくなるか

 オリンピックでのドーピング問題を、世界中に知らせたのは、1988年ソウル五輪で金メダルを剥奪された、ベン・ジョンソン選手でした。当時のスーパースター、カール・ルイスを破り、9秒79の世界新で金メダルに輝きました。しかし、それも束の間、3日後に国際オリンピック委員会(IOC)は、禁止薬物の使用によってメダルは剥奪、記録も抹消という処分を下しています。
 92年、バルセロナ五輪で復活したジョンソンは、準決勝まで進みましたが、翌年に禁止薬物が検出され、陸上界から永久追放されました。13年9月、ソウル五輪のスタジアムで、「25年前、地球上で一番速かったが、私はドーピングで記録、金メダル、名声を全て失った」と語っています。ベン・ジョンソン氏は今、反ドーピングの活動家として、薬物追放運動にたずさわっています。
 オリンピックの勝者には、名誉と多額のお金が手に入ります。もし、有利になる薬があるとしたら、その誘惑に勝つことは難しいことなのでしょう。巨大な名誉欲、利益欲が、判断を狂わせます。

高森顕徹監修『なぜ生きる』2部15章には、こう書かれています。

 ノミはノミの糞をし、象は象の糞をする。どれだけの高位高官、大臣、総理経験者までが、ワイロで獄舎につながれ、恥辱の一生で終わったことか。営々と築き上げてきたものが、利益欲の大山に押しつぶされ、悲嘆に暮れる人がなんと多いことだろう。己を映す鏡に、事欠かない。

なぜイスラム過激派に若者が

 過激派組織「イスラム国」(IS)に対して、三千回を超える空爆が行われていますが、平和にはほど遠い状態です。空爆によって、ISメンバーを一人、殺すかわりに、新たなテロリストがその何倍も、生まれているのかも知れません。「宗教」の問題は、「武力」によって解決することは不可能でしょう。
 真実の宗教を明らかにしない限り、世界に平和は訪れません。
 テレビ番組で、若者がイスラムの過激派組織に走るのは、生きる目的がわからないから、と指摘している人もいました。生きる目的を教える、真の宗教が希求されています。

高森顕徹監修『なぜ生きる』2部1章には、こう書かれています。

科学を何に使うか、その目的を教えるのが宗教の役目だ、とアインシュタインは訴えた。『私の世界観』という本には、「人生の意義に答えるのが宗教だ」とも書いている。二十一世紀が「宗教の時代」といわれるのは、もっとも大事な人生の目的を、はっきり指し示す「真の宗教」が、希求されているからであろう。