自分ならどうするか

 1972年10月、ウルグアイの学生ラグビーチームを乗せた小型飛行機が、凍結したアンデス山頂に墜落した。水も食料も防寒服も無い最悪の状況下で、72日後、16人が生還して、「アンデスの奇跡」として世界中に知られるようになった。
 友人の肉を食べて生き伸びた壮絶なサバイバルは、1993年にイーサン・ホーク主演『生きてこそ』で映画化さたが、事件から35年たち、再び『アライブ‐生還者‐』という題で映画化された。今回は、生還した本人たちがインタビューに答えており、未公開だった事実が明かされ、生きることへの本能が伝わる内容となっている。
 極限状況にこそ、本当の自分の姿が明らかになるのではなかろうか。

 高森顕徹監修『なぜ生きる』2部16章には、こう書かれている。

 敗戦が迫る南太平洋戦線では、「オイ喰われるなよ」が戦友を見送る言葉だったという。餓死寸前に追い込まれた日本軍は、同僚相食む鬼畜と変わったのである。はじめは、病死体や戦死体の大腿部の肉をはぎ取る程度だったが、ついには生きている戦友を殺して食べるようになったといわれる。若くて脂肪太りの者がとくにねらわれた。丸太に縛りつけ十五、六人が車座になって、焼けたところから食べたというのである。
 聞けば背筋の凍る思いがするが、同じ立場にいたらどうだろう。はたして彼らを責め得るか。自己に厳しく問いたださずにおれない。