ライオンを狩るエゴイズム

 アフリカのライオンは、減少の一方をたどり、「絶滅危惧種」に近づきつつある。その一方で、アフリカを訪れる観光客は数千ドルを払えば、人工的に飼育されたライオンを、狩ることができる。ライオンは、生活の場を奪われ、絶滅の危機に瀕する一方で、人間の楽しみのために飼育され、殺されている。だが、こんな人間の身勝手は、他の動物に対しても、毎日のように行われている。人間の食欲のために、どれだけの動物が、殺されていることか。

高森顕徹監修『なぜ生きる』2部16章には、こう書かれている。

 平成十二年四月、耳なれない言葉がラジオから聞こえてきた。二人の女性を拉致して「焼き殺した」犯人が逮捕されたという。「焼き殺した? 死体を焼いて隠そうとしたのだろう」と思ってよく聞くと、生きたままガソリンをぶっかけて、文字どおり「焼き殺した」というのだ。なんとむごい、そんな人間がいるのかと思ったが、一瞬ハッとさせられた。同じことをやっているのではないか、と思ったからである。焼肉に舌鼓を打っている自分を忘れていたようだ。
 アメリカでは一日十万頭あまりの牛が殺されているという。デンバー市の食肉加工会社を見学した人の話を聞いたことがある。何百頭もの牛が、狭いコンクリート壁の通路に追い込まれてゆく。行きどまりで牛の頭に機械が載せられ、ボタンが押される。たいていは一撃で倒された。必死に逃れようとするものもいたが、後続の牛に阻まれて最後は仕留められていったという。
 私たちの食欲を満たすのに、こんな作業が日々、くり返されているのだ。牛ばかりではない。どれだけの生き物の命をうばってきたことか。