アインシュタインの宗教観
アインシュタインの私信で、そのキリスト教観が明らかになり、話題になった。ドイツ語で書かれたその手紙は、1954年1月3日のもの。哲学者エリック・グートキンド氏への返信で、「わたしにとって『神』という言葉は人間の弱さの産物という以上の何物も意味しない。聖書は原始的な言い伝えで、非常に子どもっぽい」と述べている。
アインシュタインは『私の世界観』という著書で、宗教の発展を三段階に分けている。最も原始的な「怖れの宗教」と、その次のキリスト教やユダヤ教に代表される「倫理的宗教」には、擬人的な神の概念が含まれる。
しかしごくまれに、神が登場しない「宇宙的宗教」といわれる段階に進む宗教があり、「宇宙的宗教性の要素がはるかに強くなっているのは仏教である。われわれがこのことをとくに教えられたのはショーペンハウエルのすばらしい著作におおいてであった」(湯川秀樹監修『アインシュタイン選集3』60頁)と記述している。
高森顕徹監修『なぜ生きる』112頁には、次のように書かれている。
◎ 真の宗教の使命――訴えるアインシュタイン
物が豊かになり、暮らしはずいぶん変わったが、それで幸福になれるのではない。二十世紀は、それを証明した時代といわれる。長足の進歩をとげた科学は、史上、もっとも強い力を持った手段であるが、かつてない大量殺戮にも使われ、人間自体を滅ぼそうとするまでに至った。
科学を何に使うか、その目的を教えるのが宗教の役目だ、とアインシュタインは訴えた。『私の世界観』 という本には、「人生の意義に答えるのが宗教だ」とも書いている。二十一世紀が「宗教の時代」といわれるのは、もっとも大事な人生の目的を、はっきり指し示す「真の宗教」が、希求されているからであろう。