先を知る知恵をもって安心したい

 アメリカでは、霊能者が一流企業で荒稼ぎをしている。経営学とも最新技術も無縁の、ある49歳の女性は、「直観」を語るだけで年に数十万の報酬を得ているという。
 まだ数は少ないものの、企業のアドバイザーを務める霊能者が増えていて、名のある企業で法律や金融の決定に関わっているのだ。
塹壕無神論ではいられない」「苦しい時の神頼み」といわれるように、今日の先が読めないビジネスの世界では、経営者が霊能力にすがってもおかしくはない。
 未来の暗い不安がある限り、占いはなくならないだろう。。先を知って明るくなりたいのが、すべての人の願いだ。
 しかし、たとえ事業の成功、不成功を予測し、株の動きを正確に知ることができたとしても、百パーセント確実な未来である後生がハッキリしなければ、心からの安心は得られない。

 親鸞聖人は、後生暗い心を破ることこそ人生の目的と明言されている。後生暗い心が、苦悩の根元だからだ。

 高森顕徹監修『なぜ生きる』2部6章には、こう書かれている。

 どうして「後生暗い心」が苦悩の根元なのか、疑問に思う人が多いだろう。だが、未来暗いと、どうなるか。例えれば、こうもいえよう。
 三日後の大事な試験が、学生の今の心を暗くする。五日後に大手術をひかえた患者に、「今日だけでも、楽しくやろうじゃないか」といってもムリだろう。
 未来が暗いと現在が暗くなる。墜落を知った飛行機の乗客を考えれば、よくわかろう。どんな食事もおいしくないし、コメディ映画もおもしろくなくなる。快適な旅どころではない。不安におびえ、狼狽し、泣き叫ぶ者もでてくるだろう。乗客の苦悩の元はこの場合、やがておきる墜落なのだが、墜死だけが恐怖なのではない。悲劇に近づくフライトそのものが、地獄なのである。
 未来が暗いと、現在が暗くなる。現在が暗いのは、未来が暗いからである。死後の不安と現在の不安は、切り離せないものであることがわかる。後生暗いままで明るい現在を築こうとしても、できる道理がないのである。

 すべての人に、早く苦悩の根元に気づいてもらいたいと念じずにおれない。