子ども漫画は問う

 子どもに人気の「アンパンマン」の原形が生まれて四十年、テレビアニメ化されて二十年となった。
 原作者「やなせたかし」氏によると、アンパンマンが自分の顔をちぎって食べさせることは、正義を貫くときには自分も痛みを伴うことを表現している。
 やなせ氏が子どもたちに訴えたいことは、テーマソングの歌詞「なんのためにうまれて なにをして 生きるのか こたえられないなんて そんなのは いやだ!」に込めてある。
 北日本新聞平成20年11月18日の記事で、やなせ氏はこう語る。
「現代の若者たちは大学を卒業しても、それがわからないでいる。子どものころから、自分は何のために生まれて、何をするのかを考えていれば、ある時点で、人生の方向をはっきりとつかむことができるんです」

 これは大人にとっても最重要課題だろう。
 高森顕徹監修『なぜ生きる』1部4章には、こう書かれている。

 働くことが幸せと思えるのは、順調な間だけでしょう。仕事がすべてだった人は、仕事が行き詰まったとき、生きがいを喪失します。「肩書きを取ったら何が残るのか」「何を目的に生きればよいのか」、途方に暮れるのです。
「何の支柱もなかった」と、黄昏の人生に気づいたのでは、遅きに失するのではないでしょうか。

 子ども時代から人生について考える環境を整えるよう、大人はもっと考えてゆくべきなのではないだろうか。