働く意欲は「人生の目的」から

 世界的な不況で、仕事に生きがいを感じるのが難しい時代になった。昇給も見込めず、リストラの不安、厳しくなる一方の競争など、労働意欲を下げる材料に、ことかかない。
 そんな中で注目されているのが、社員の心の中から「やる気」が湧き上がってくるようにする「内発的な動機付け」だという。
 例えばアメリカの格安航空会社サウスウエストでは、「従業員第一主義」をかかげ、社員を信用し、各自が自由に工夫をする裁量を与えている。
その結果、従業員が、やる気を出して働くサウスウエストは黒字続きで、顧客満足度も業界トップになっている。
 今後も各企業が、どうすれば社員の心の中から「やる気」が湧き上がるようになるか、考えて行くだろう。
 働く意欲が一番、出てくるのは、「働く目的」を知ることではないだろうか。

高森顕徹監修『なぜ生きる』1部5章には、こう書かれている。

 出世街道を歩んでいても、働くことの意味がわからず、「できれば会社をやめたい」人が増えているようです。

   私が印象に残っているのは、次の話だ。彼は日本でも有数の一流大学の出身なのだが、三〇代前半の同級生が集まると、ひとが羨むほどの大企業に勤めている彼らが全員、口を揃えて「できれば会社をやめたい」と言うというのだ。(中略)
   私は、最近マイホームを買ったという友人の言葉を思い出した。「でもね、契約書にサインをした時、途端にむなしくなったんだ。ローンの返済にあと三〇年はかかる。その間今の会社に通い続けて、たいしてやりがいがあるわけでもない今の仕事を続けなくてはならない。そうすると、俺の残りの人生、ローン返済のための人生かって思ったよ」。
   そもそも、日本のビジネスマンの生活は過酷である。ストレスで健康を損ない、残業残業で家族の顔もまともに見れない。それに加えて、昨今の景気の低迷である。
   多くの会社員が、ますます自分の仕事に意味や希望を見出せなくなっている。(諸富祥彦 『〈むなしさ〉の心理学』)

「残りの人生、ローン返済のための人生か」と肩を落とすのは、生きる意味がぼんやりしているからにちがいありません。人生の目的が鮮明であれば、「そうだ、このために働くのだ!」と意欲がわいて、ニーチェが言うように辛苦を求めさえするでしょう。労働意欲の一番の栄養剤は、「人生の目的」です。

 皆が「人生の目的」を明らかに知ってこそ、危機を乗り切る力が湧いてくるだろう。