人類は、いつ滅亡するのか

 古代マヤ文明の暦をもとにした、2012年12月21日は人類滅亡の日だという噂が、世界を騒がせた。
 とくにロシアと中国では、多くの国民が不安に陥ったという。
 人類滅亡が近づいていると思ったら、とても今を明るくすることはできないだろう。未来が暗くなると、現在も暗くなる。だが、たとえ人類滅亡の日が来なくても、全ての人は、一日たったら一日、一年経ったら一年、死に近づいているのだ。これでは、人生を心から楽しむことはできないだろう。

高森顕徹監修『なぜ生きる』1部8章には、こう書かれている。

 風邪だと言われても驚きませんが、「ガンだ」「エイズだ」となると大騒ぎです。それらは死に至るからでしょう。
 ティリッヒ(ドイツの哲学者)は 『生きる勇気』 で、人間は一瞬たりとも、死そのものの「はだかの不安」には耐えられないと言いました。死と真っ正面に向きあうのは、あまりにも恐ろしいので、病気や環境問題と対決しているのでしょう。核戦争が怖い、地震が恐ろしい、不況が心配……というのも、その根底に「死」があるからではないでしょうか。
 私たちは、「死神の掌中で弄ばれる道化」ともいわれます。どれだけ逃れようともがいても、死に向かってひた走っているのです。しかもその壁の向こうはどうなっているのか、まるで知りません。
 未来がハッキリしないほどの、不安なことがあるでしょうか。先の見えない闇の中を走っているから、何を手に入れても、心から明るくなれないのでしょう。「この苦しみは、どこからくるのか」―― 人生を苦に染める真因がわからなければ、真の安心も満足も得られません。苦しみの元を断ち切って、「人間に生まれて良かった!」という生命の歓喜を得ることこそが、人生究極の目的なのです。
 死をありのまま見つめることは、いたずらに暗く沈むことではなく、生の瞬間を、日輪よりも明るくする第一歩といえましょう。