なぜ殺してはいけないのか

 6月12日、人工透析中の患者からチューブを抜き、殺害しようとした疑いで、東京都でクリニック所長を勤める、49歳の内科医が逮捕された。本人は容疑を認めているという。
 この容疑者は、「仕事を終えていったん帰宅しようとしたが、誰かを殺そうと思い、クリニックに戻った。患者が病室の出入り口付近にいたため、狙った」と供述している。無差別殺人をはかった動機については、「誰でもよかった。人を殺して捕まって、死刑になりたかった」と話している。
 このような悲劇を無くすためには、なぜ人命は地球より重いのか、人生の目的が鮮明にされなければ、どんな対策も水面に描いた絵に終わるだろう。
高森顕徹監修『なぜ生きる』1部2章には、こう書かれている。


 自分の命の大切さを知らねば、他人の命も尊重できないでしょう。「死んでもいいじゃん」の無知が、「殺してもいいじゃん」の暴論に、すり替わってゆくのではないでしょうか。
「どうして人を殺したらいけないんですか?」
 高校生がボソッと漏らしたテレビ番組で、シーンと静まり返った出演者たち。パタッと番組が終了し、さまざまな議論をよびました。
「人命は地球よりも重いからだ」といくら言っても、無駄でしょう。
「どうして地球より重いの?」と突っ込まれたら、終わりだからです。
 どんな人でも、答えに窮するのではないでしょうか。哲学者も、お手上げです。なぜ命が尊いか、説明できた哲学者を知らないと、P・フット(カリフォルニア大教授)は、論文「道徳的相対主義」に書いています。哲学書を何百冊読んでもわからないのです。