死に至る病

 西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱は、四千人を超える犠牲者を出している。
 エボラウイルスの拡散を食い止めるために、世界各国から数百億円の支援が寄せられている。
だが、たとえエボラウイルスに感染したとしても、必ず死ぬのではない。致死率は50パーセントから70パーセントといわれている。
 一方、全人類は、あと150年もたたぬうちに、100パーセント死ななければならないのだ。伝染病から命を守っても、二百年も三百年も、命を守り続けることはできない。
 自分の命を守りきることは、誰にもできないのに、こんな大問題を、誰も論じようともしていない。

高森顕徹監修『なぜ生きる』2部5章には、この矛盾を、こう書かれている。

「死んでからのことは、死んでみにゃわからん。つまらんこと問題にするな」
と言いながら、有るやら無いやらわからない、火災や老後のことは心配する。火事にあわない人がほとんどだし、若死にすれば老後はないのに、火災保険に入ったり、老後の蓄えには余念がない。
「老後のことは老後になってみにゃわからん。つまらんこと」
とは、誰も言わないようだ。火災や老後のことは真剣なのに、確実な未来を問題にもしない自己矛盾には、まだ気がつかないでいる。